■概要
【事件名】プレサンス事件・元特捜検事特別公務員暴行陵虐事件
【裁判所】大阪地方裁判所
【裁判長】大森直子
【被告人】田渕大輔(54)・検事(現東京高検)
【罪名】特別公務員暴行陵虐
【認否】否認・無罪主張
【審理方式】付審判
【第5回公判】2026年10月13日
大阪地検特捜部が捜査した不動産会社「プレサンスコーポレーション」(当時)の業務上横領事件をめぐり、取調べで容疑者を怒鳴るなどしたとして、特別公務員暴行陵虐罪に問われた検事、田渕大輔被告人(54)の第5回公判が2026年10月13日、大阪地裁で開かれた。
公判では、前回に引き続き取調べを記録した映像が再生されたほか、当時の大阪地検幹部らが取調べについて述べた内容を記録した報告書などが、弁護側の証拠として採用された。
弁護側は、問題とされた発言の前後を含む取調べ全体を踏まえて違法性を判断すべきだとして、無罪を主張している。
■事件の概要
2019年、大阪地検特捜部は、プレサンスコーポレーションが関係する業務上横領事件を捜査した。
田渕被告人は同年12月、同社の元部長に対する取調べを担当した。
元部長は当初、事件への関与を否認していたが、12月10日、自身と当時社長だった山岸忍氏の関与を認める供述調書に署名した。
その後、山岸氏は刑事裁判で無罪が確定。一方、元部長については有罪判決が確定している。
田渕被告人は、取調べ中の言動が特別公務員暴行陵虐罪に当たるとして、付審判決定により刑事裁判に付された。
■付審判決定の対象
付審判決定で問題とされたのは、2019年12月8日から9日にかけて行われた取調べのうち、計約50分間の言動。
田渕被告人が元部長に対し、「検察なめんなよ」などと怒鳴った行為が、特別公務員暴行陵虐罪に当たるかが争われている。
田渕被告人は初公判で、陵虐や加虐の意図はなかったとして、無罪を主張した。
■第5回公判
取調べ映像約1時間半を再生
2026年10月13日の公判では、弁護側の請求により、問題となった発言の前後に行われた取調べの映像、計約1時間半が再生された。
今回再生されたのは、付審判決定で犯罪行為とされた約50分間には含まれない部分だった。
映像には、田渕被告人が元部長の体調を気遣ったり、落ち着いた口調で質問したりする様子が記録されていた。
問題とされた発言の後、元部長が虚偽の供述をしたいわけではないと説明すると、田渕被告人はその理由を淡々と尋ねた。
また、元部長が弁護士への相談を希望した際には、田渕被告人が了承する場面もあった。
身の上話や謝罪の場面も
再生された映像では、田渕被告人が自身の経歴について語ったり、元部長の夫婦関係について「純愛じゃないですか」と述べたりする場面もあった。
翌日の取調べでは、前日に元部長の家族愛について否定的な発言をしたことを謝罪していた。
元部長は、問題とされた取調べの翌日にあたる12月10日、自身の容疑を認める供述調書に署名している。
弁護側は、強い口調での取調べ直後に自白させたわけではないことなどを指摘した。
■当時の大阪地検幹部の認識
公判では、検察官役の指定弁護士が、当時の大阪地検幹部らから事情を聴いた報告書などが、弁護側の証拠として採用された。
報告書は、付審判開始決定後の2024~2025年に作成されたもので、当時の検事正、次席検事、特捜部長の認識が記録されている。
山本真千子元次席検事
山本氏は、田渕被告人の取調べについて、一方的に大声を出し続けること自体に問題があるとの認識を示した。
一方で、取調べは度を超しているものの、犯罪行為に当たるとは考えていないと説明した。
田辺泰弘元検事正
田辺氏は、特捜部と公判部の双方から取調べに問題はないとの報告を受け、その説明に納得していたと述べた。
山下裕之元特捜部長
山下氏は、公判部検事による確認で問題がないと判断されたため、当初は自ら取調べ映像を確認しなかったと説明した。
その後、異動してから映像を確認し、適切とはいえない取調べだったとの認識を示した。
■弁護側の主張
弁護側は、取調べの一部の発言だけを切り取るのではなく、前後のやり取りや取調べ全体の経過、元部長自身の受け止め方などを踏まえて判断すべきだと主張している。
今回の映像再生も、問題とされた約50分間以外の取調べ状況を示すために請求されたもの。
弁護側は、田渕被告人の言動が不適切だったとしても、直ちに特別公務員暴行陵虐罪に該当するものではないとして、無罪を求めている。
■裁判の争点
今回の裁判の中心的な争点は、取調べ中の叱責や威圧的な言動が、刑法上の特別公務員暴行陵虐罪に当たるかという点にある。
特別公務員暴行陵虐罪は、検察官や警察官などが職務に際し、被疑者などに暴行や陵虐を加えた場合に成立する犯罪である。
このため、単に取調べが不適切だったかどうかだけでなく、問題となった言動が刑法上の「陵虐」に該当するかが問われる。
弁護側は、取調べ全体の状況や元部長の反応を重視すべきだと主張。
一方、問題となった約50分間の言動そのものの性質や、被疑者に与えた影響をどのように評価するかも重要な判断事項となる。
また、当時の大阪地検幹部が取調べをどのように評価し、組織としてどのような確認を行っていたのかも、公判で明らかにされている。
なお、当時の幹部が犯罪行為ではないと認識していたことと、実際に犯罪が成立するかどうかは別の問題であり、最終的には裁判所が判断する。
■今後の裁判
次回公判は田渕被告人に対する被告人質問が行われる見通し。
問題となった取調べについて、担当検事本人がどのような認識を持ち、どのような意図で発言したのかが注目される。
■出典
- 産経新聞 2026年10月13日
- 朝日新聞2026年10月13日

- 読売新聞 2026年10月14日

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