■概要
【事件名】プレサンス事件・元特捜検事特別公務員暴行陵虐事件
【裁判所】大阪地方裁判所
【裁判長】大森直子
【被告人】田渕大輔(54)・検事(現東京高検)
【罪名】特別公務員暴行陵虐
【認否】否認・無罪主張
【審理方式】付審判
【第4回公判】2026年10月6日
大阪地検特捜部による不動産会社「プレサンスコーポレーション」(当時)の業務上横領事件の取調べで、容疑者を罵倒するなどしたとして、特別公務員暴行陵虐罪に問われた検事、田渕大輔被告人(54)の第4回公判が2026年10月6日、大阪地裁で開かれた。
弁護側は冒頭陳述で、厳しい言葉を使ったのは元部長に真実を話してほしかったためであり、精神的苦痛を与えて供述を引き出す意図はなかったとして、改めて無罪を主張した。
また、問題とされた言動の前後を記録した取調べ映像が再生された。
■事件の概要
2019年、大阪地検特捜部は、プレサンスコーポレーションが関係する業務上横領事件を捜査した。
田渕被告人は、当時同社の部長だった男性(61)に対する取調べを担当。男性は当初、事件への関与を否認していたが、その後、自身と当時社長だった山岸忍氏の関与を認める供述をした。
この供述などを基に、特捜部は同年12月16日、山岸氏を逮捕した。
その後、山岸氏は無罪が確定。一方、元部長については業務上横領罪で有罪判決が確定している。
山岸氏は田渕被告人の取調べについて付審判を請求し、2024年8月、大阪高裁が付審判開始を決定した。
■付審判決定の内容
問題とされているのは、2019年12月8日から9日にかけて行われた元部長への取調べのうち、計約50分間の言動。
田渕被告人は机をたたき、「検察なめんなよ」「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人」などと発言したとされる。
検察官役を務める指定弁護士は、田渕被告人が激しい口調で叱責や罵倒を繰り返したとして、特別公務員暴行陵虐罪に当たると主張している。
■第4回公判
弁護側の冒頭陳述
弁護側は、田渕被告人が取調べで厳しい言葉を使った理由について、客観的証拠と矛盾する供述を続ける元部長に、真実を話してほしかったためだと説明した。
田渕被告人は、元部長が社内などから圧力を受け、真実を話せないのではないかと考えていたという。
弁護側は、被疑者の言い分を十分に聞き、客観的証拠や関係者の供述と照らし合わせて事実関係を明らかにすることが、田渕被告人の取調べにおける基本姿勢だったと主張した。
その上で、厳しい言葉は自分の考えを相手に伝えようとした結果であり、元部長を精神的に追い詰め、元社長の関与を供述させようとする意図はなかったと訴えた。
元部長の受け止め方
弁護側は、取調べを受けた元部長自身の認識についても言及した。
弁護側によると、元部長は別事件の取調べで、田渕被告人から脅されたとは思っていなかったと説明していたという。
また、「大罪人」という発言についても、仮定の話として理解していたとされる。
弁護側は、元部長が精神的苦痛を受けたという認識を持っていなかったことや、当時、元部長の弁護人から取調べに関する苦情がなかったことを指摘した。
取調べ映像の再生
公判では、弁護側が証拠として請求した取調べ映像が再生された。
映像には、付審判決定で問題とされた言動の前後の様子が記録されていた。
弁護側は、机をたたいたり怒鳴ったりしたのは長時間の取調べの一部分であり、それ以外の場面では穏やかな口調で話していたと説明した。
問題とされた場面だけでなく、取調べ全体の経過を踏まえて判断すべきだと主張した。
■弁護側の無罪主張
弁護側は、田渕被告人の言動が特別公務員暴行陵虐罪の構成要件である「陵辱」「加虐」に該当しないと主張している。
特に、暴行を伴わず、言葉による行為だけで陵虐を認定した有罪裁判例がほとんどないことを指摘した。
その上で、取調べ映像の一部が与える強い印象だけで犯罪の成否を判断すべきではないと訴えた。
■裁判の争点
今回の裁判では、取調べ中の威圧的な発言や叱責が、刑法上の「陵虐」に当たるかが中心的な争点となっている。
弁護側は、取調べの目的、発言に至る経緯、前後のやり取り、元部長の受け止め方などを総合的に考慮すべきだと主張している。
一方、指定弁護士側は、机をたたきながら激しい口調で叱責した行為そのものを問題視している。
また、弁護側が主張する「精神的苦痛を与える意図がなかった」という点についても、その認識が犯罪の成立にどう関わるかが争われる。
取調べの目的が真実の解明にあったとしても、それだけで手段の違法性が否定されるわけではない。裁判所が具体的な言動や取調べ状況をどのように評価するかが注目される。
■今後の裁判
次回の第5回公判は2026年10月13日に予定され、弁護側の証拠調べが行われる見通し。
問題とされた約50分間の取調べだけでなく、その前後の状況を含めた審理が続く。
■出典
- 産経新聞 2026年10月6日
- 読売新聞 2026年10月6日

- 日本経済新聞 2026年10月6日

- 時事通信 2026年10月6日

■弁護側冒頭陳述全文

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